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2023.02.03

弁護士 後藤 敦夫

民法826条第2項の利益相反

 民法826条1項2項は,利益相反行為として特別代理人の選任が必要な場合を規定している。条文は以下のとおりである。

 第1項 

 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については,親権を行う者は,その子のために特別代理を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

 第2項

 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において,その一人と他の子との利益が相反する行為については,親権を行う者は,その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

 

 第1項の典型例としては,親と未成年の子が共同相続人である場合に,その親が,自身だけでなく,子の代理人としても遺産分割協議に参加する場合があげられる。

 第2項の典型例としては,例えば,①未成年の子が複数人いる夫婦が離婚し,母が親権者となり,②その後,子がまだ未成年のうちに父が死亡し,③親権者である母が複数の子を代理して父(母からみると元夫)の遺産分割協議に参加するという場合があげられよう。

 

 第1項の利益相反は相続案件を多く扱っていればたまに見かける現象である。第2項の利益相反もそう珍しくない様に思うが,第1項の利益相反に比べればあまりお目にかからない類型といえる。だからなのか,以前遺産分割調停において,第2項の利益相反にあたるにも関わらず特別代理人が選任されないまま手続きが進行してしまったことがあった。

 わたくしは利益相反にあたらない側の代理人であったが,利益相反にあたる側にも代理人が就いていた。利益相反にあたることを双方の代理人,そして裁判所も見過ごしたまま調停手続きが大詰めまで進み,調停条項の草案を起案することとなったわたくしが,その起案中にようやく特別代理人の選任が必要であることに気が付いたという次第であった。すぐに相手方の代理人にその旨伝えたが,あまりピンと来ていない様子であった。そのため裁判所書記官に伝えてみたが,こちらもあまりピンと来ていない様子。しかし,すぐに裁判所より特別代理人選任の手配をする旨の連絡があった。おそらく裁判官に確認したのだろう。その後滞りなく特別代理人の選任手続きがなされ,当初の予定通り調停成立となった。

 わたくしが気付かずとも,調停条項をチェックする際に裁判官が気付いたであろう。しかしもし誰も気付くことなく調停が成立していたらどうなったであろうか。金融機関の職員が気付いたなら遺産である預貯金の払戻しはできなかったであろうし,登記官が気付いたなら遺産である不動産の所有権移転登記はできなったであろう。後日,遺産分割調停の無効・取消の主張がなされることもあり得た。

 

 

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