弁護士コラム
2020.05.13
弁護士 後藤 敦夫
新型コロナウィルスと「休業手当」
新型コロナに関連して労働者を休業させる場合の欠勤中の賃金について,厚生労働省発表の「新型コロナウィルスに関するQ&A」では,「労使で十分に話し合っていただき,労使が協力して,労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いしま す。」とあり,さらに続けて「賃金の支払いの必要性の有無などについては,個別事案ごと に諸事情を総合的に勘案すべきですが,労働基準法第26条では,使用者の責めに帰すべき事情による休業の場合には,使用者は,休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60 以上)を支払わなければならないとされています。」とある。
結局,「休業手当」が支払われるべきかどうか」については, 個別のケースによるという ことである。そこで,休業手当が支払われるべきかどうかについての一般的な指標を書いてみる。あくまで一般的なものである。個別の事情については最寄りの弁護士等に相談しても らいたい。
・新型コロナウィルス感染による休業
都道府県知事が行う就業制限による場合には,休業手当の支払いはない。ただし,被用者保険に加入している場合には傷病手当が支給される。
上記のような行政の措置がなく,かつ感染した従業員が出社を希望している場合の休業については,休業手当は支払われるものと思われる。
☞都道府県知事が感染症法に基づき就業制限をする場合には,休業について使用者に責任がないので,休業手当は支給されない。そのような就業制限がない場合には,使用者としては休業手当を支払ったうえで,自宅待機などを命ずるほかないと思われる。ただし,ケースによっては使用者に責任がないとして休業手当が支給されないという場合もあろう。
・感染の疑いによる休業
従業員が自主的に休業している場合には,休業手当は支払われない。使用者の判断で休ませる場合には,原則,休業手当は支払われる。
☞従業員が自主的に休む場合には,通常の病欠と同じであるから休業手当は支払われない。 他方,使用者が「感染の疑い」だけを理由として休ませる場合には,原則,休業手当は支払われるものと思われる。
・一方的な出勤停止による休業
事業主の自主的な判断に基づく休業命令については.休業手当は支払われる。 他方,新型コロナの影響により事業を縮小せざるを得ない場合の出勤停止については ,ケースバイケース。
☞新型コロナの影響により事業を縮小せざるを得ない場合の出勤停止については,それが「不可抗力」によるものかどうかをケースごとに判断する必要がある。「不可抗力」によるものであれば,事業主に責任はないので休業手当は支払われない。
そこでは,縮小に至った経緯(新型コロナによる影響の程度,他の事情による影響の有無等)や事業主が休業を避けるためにあらゆる手を尽くしたかどうかなどが問題となる。
なお,事業主は,休業手当の支給が必要な場合,要件を満たせば雇用調整助成金の支給を受けることができる。
西播磨(たつの市,宍粟市,相生市,赤穂市,揖保郡太子町,佐用郡佐用町,赤穂郡上郡町),姫路の労働問題で弁護士をお探しなら,後藤敦夫法律事務所へ。