弁護士コラム
2022.03.30
弁護士 是澤 雄一
個人事業主の破産
破産手続には、大きく管財事件と同時廃止の2つの手続きがあります。裁判所は、破産決定をするときは、同時に破産管財人を選任することが原則となっています(管財事件)が、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するに不足すると認められるときは破産手続廃止決定(同時廃止)をすることもできます。
同時廃止となった場合、財産調査や破産財団の換価・配当は行われないため、管財事件に比べ期間が短くなります。また、破産管財人が選任されないため、予納金(管財報酬は最低20万円)を収める必要もありません。このように、多くの債務者は、期間や費用の点で同時廃止による処理を希望します。実際に、個人破産の多くが同時廃止で処理されています(個人の場合は、数字上、原則:同時廃止、例外:管財事件となっています)。
しかし、「個人」であっても「個人事業主」の場合は、契約関係や財産関係が複雑な場合が多く、これらを十分に調査をする必要があるため、原則通り管財事件となります。
今回は、「個人事業主」、かつ、「事業継続」を予定している場合に同時廃止が認められた事例を紹介します。
Aさんは、他人所有の土地建物で店舗事業をしていましたが、年々売上が減少し、次第に事業資金や生活のために消費者金融等で借り入れをせざるを得なくなってしまいました。数年にわたり借り入れと返済を繰り返した結果、相談時には、合計1500万円の借金を負い、毎月20万円の返済を余儀なくされていました。当事務所は、Aさんの経済状態から支払不能と判断し、破産手続きをするとの方針に決めました。幸いにも、土地建物の所有者が、引き続きAさんに土地建物を無料で利用して良いということだったので、Aさんは事業を継続することを希望されました。
問題は、Aさんが個人事業主であること、かつ、今後も事業を継続したと考えていることです。さきに述べたように、Aさんは個人事業主であるため、原則管財事件となります。しかし、Aさんの事業には複雑な契約関係がなかったこと、換価できる財産がないことなどを理由に同時廃止の処理で進めることにしました。
裁判所には、Aさんの事業においては、従業員がおらず、継続的な取引も存在しないこと、また、申立後も事業を継続する予定ですが、業者との取引がないため新たな債務(元本)が発生・増加する可能性がなく管財人による財産調査の必要性がないことを報告しました。加えて、事業用資産については全て査定金額を調査し、資産価値が乏しく換価財産がないことなどを報告しました。
結果、裁判所の判断としては「同時廃止」となりました。
西播磨(たつの市・宍粟市・相生市・赤穂市・揖保郡太子町・佐用郡佐用町・赤穂郡上郡町)、姫路で債務整理に関し弁護士をお探しなら、「後藤敦夫法律事務所」へ。